白い部屋の呼吸について。
風は生暖かく、耳障りな轟音がぼうと近づいてはまた遠のく。頼りないビニール傘をギターのソフトケースに不器用に突き刺さしてバスに乗り込んだものの、江戸の風に煽られ3秒ほどでひっくり返ってしまった虚しさよ。ビニール傘と言えど新...
風は生暖かく、耳障りな轟音がぼうと近づいてはまた遠のく。頼りないビニール傘をギターのソフトケースに不器用に突き刺さしてバスに乗り込んだものの、江戸の風に煽られ3秒ほどでひっくり返ってしまった虚しさよ。ビニール傘と言えど新...
夜行バスの待ち合い所は、雑踏を抜け暗闇を抜け、その先にある寂れたホテル街の中にあった。一本外れには飲み屋がずらりと立ち並んでいて、花金ということもあってかガラス張りの店は開け放たれたままで、中から黄色い声が漏れ出してくる...
こんなにも時が経ってしまった。文章は毎日書くことに意味があると誰かが言っていて、毎日書いている時はその意味が分かってくるような気がしたりするけれど、なんだかんだと日々が過ぎてゆくとなかなかそうもいかない。こう書いている間...
母が蒔き損ねたバジルとパクチーの種があった。少し季節が外れてしまったようで、今から蒔いても芽は出ないかもしれない。しかし今蒔かないとなんだか心残りだから、ひとまず蒔いてみることにする、と母は言う。私も興味が沸いて手伝うこ...
里里という猫が我が家にやって来た。サトリと読む。私が名付けた。音の通り、悟りたいという願いを込めて、里里(サトリ)と名付けた。 さとり【悟り/覚り】 出典:デジタル大辞泉(小学館) 1.物事の真の意味を知ること。理解。...
通り雨がやってくる前に訪れる暗がりに敏感になって来た。雨が降る前は香りがする。そしたら雷が遠くで鳴って、あっという間に雨が降り出す。いつまで続くのかはわからない。地面にたたきつける雨音が全てをかき消す。 ぼうとして母のア...