ハンカチーフと、神様の居るところ。
父はいつもハンカチを持っていて、母と散歩がてら街を歩く際にふと入る手洗いののち、自分のハンカチを用意してその辺で彼女を待っている。彼女は濡れた手のまま彼のもとへ行き、彼から差し出されるハンカチで手を拭う。母はもしかしたら...
父はいつもハンカチを持っていて、母と散歩がてら街を歩く際にふと入る手洗いののち、自分のハンカチを用意してその辺で彼女を待っている。彼女は濡れた手のまま彼のもとへ行き、彼から差し出されるハンカチで手を拭う。母はもしかしたら...
‘待つ’ということが、己の人生の課題であるような気がしている。とんでもなく‘待てない’人間でもないが、‘待つ’ことが得意、というわけでもない。実際に‘待つ’ときにはなんとなく気合いみたいなものが必要で、冷静でいようと意識...
風は生暖かく、耳障りな轟音がぼうと近づいてはまた遠のく。頼りないビニール傘をギターのソフトケースに不器用に突き刺さしてバスに乗り込んだものの、江戸の風に煽られ3秒ほどでひっくり返ってしまった虚しさよ。ビニール傘と言えど新...
通り雨がやってくる前に訪れる暗がりに敏感になって来た。雨が降る前は香りがする。そしたら雷が遠くで鳴って、あっという間に雨が降り出す。いつまで続くのかはわからない。地面にたたきつける雨音が全てをかき消す。 ぼうとして母のア...