目の眩むような暑さに夏の訪れを感じずにはいられない。まだ六月だというのにこんな具合では、灼熱の太陽照りつける真夏に立ち向かえるだろうかと不安になる。そんなことを考えていると、にわか雨が降って一瞬にして草木が匂い立つ夕暮れ時。すぐに夜が来て、遠くからバイクのやってくる音が聞こえた。ガソリンの匂いがする。重低音が暗闇を引き裂く。匂いはますます濃くなって無遠慮に鼻にまとわりつく。永遠に続いてゆくかのような音と匂い。
昔、音楽を教えてくれた人がいた。彼女にずっと聴いていたい音楽は何かと問うたら「風」と言った。静かな夜に、風を聴く。風はいつだって形を変えて歌い続ける。
生まれ変わりを信じるか。この世の縁とは何なのか。何か理由が欲しいから、たった一度すれ違った人ですら、きっともっとずっと昔に、どこかですれ違った一人なんだろうと思う。哀しみは簡単に怒りへ変わるだろう。その怒りはお前のものか。誰のものだ。その感情は、他者への愛か、己への愛か。勘違いしてはならない。甘えてはならない。偽善などいらぬ。覚悟しなければ。
届かぬ想いは、何処へゆくのか。