また会おう、また会おう、また会おう。
‘待つ’ということが、己の人生の課題であるような気がしている。とんでもなく‘待てない’人間でもないが、‘待つ’ことが得意、というわけでもない。実際に‘待つ’ときにはなんとなく気合いみたいなものが必要で、冷静でいようと意識...
‘待つ’ということが、己の人生の課題であるような気がしている。とんでもなく‘待てない’人間でもないが、‘待つ’ことが得意、というわけでもない。実際に‘待つ’ときにはなんとなく気合いみたいなものが必要で、冷静でいようと意識...
阪急電車というのはいつだって魅力的である。特に馴染みもないし、時たま京都に用がある時に乗車するくらいなのだけれど、梅田駅付近で‘阪急電車のりば’という案内看板などがちらほらと出てくると、なんとも言えない高揚感が湧き上がっ...
とても綺麗に髪の毛を結っている女性がいて、彼女は友人とエスカレーターに乗っていた。手に握るスマートフォンにはInstagramらしきアプリが開かれていて、チラチラと光っている。それを眺めながら時たま友人の話に相槌を打つ彼...
過去に引き戻され苦しむ瞬間があって、それは本当に些細なきっかけで思い出され、またかと、憤りに震える。またお前か、と、まだ顔を出してくるのか、と、いい加減にしてくれ、と、怒鳴られ続けた日々を越え、血走った眼、欲吐き捨てられ...
猫は夜中に目覚めてはこの部屋を徘徊し、気まぐれににゃあと一鳴きする。悪い夢を見るたびそちらで叫び、と同時にこちらでも叫び、自分のうめき声で飛び起きる私は、豆電球の明りの中で猫と目が合う。ピアノの上でじっとこちらの様子をう...
歌うために旅人の部屋に忍び込んだのは夕刻過ぎだった。近所迷惑になるといけないので、歌うときはいつだって部屋中の窓を閉め切る。汗が背中から流れ落ちる頃窓を開け放つと、大きな風が一斉に吹き込んできて白いカーテンが揺れた。風が...
「暑い、暑い。」と誰もが承知していることを、それでも口に出さずにはいられないこの夏。日中に自転車に乗ったら最後、一漕ぎした途端にもう外出を後悔する。暑さに顔をしかめ、漕ぎ続けなければならぬのは地獄への道か。まるで台所で肉...
風は生暖かく、耳障りな轟音がぼうと近づいてはまた遠のく。頼りないビニール傘をギターのソフトケースに不器用に突き刺さしてバスに乗り込んだものの、江戸の風に煽られ3秒ほどでひっくり返ってしまった虚しさよ。ビニール傘と言えど新...
夜行バスの待ち合い所は、雑踏を抜け暗闇を抜け、その先にある寂れたホテル街の中にあった。一本外れには飲み屋がずらりと立ち並んでいて、花金ということもあってかガラス張りの店は開け放たれたままで、中から黄色い声が漏れ出してくる...