指輪、et cetera.

夫はenterキーを執拗に強く叩く癖があって、その音が廊下を通ってこの小さな家中に響き渡るのだが、耳障りで仕方がない。私は息を潜めて夜が明けるのを待つ。深く呼吸していると、だんだんとこの部屋にあるすべてのものと溶け合って...

戯れ言ひとつと、

風が柔らかく、優しくなって、ひとつ、また季節が変わったなあと言う実感。それ吹くたび草木揺れるが、以前の揺れ方とまた違う。 先日まで雨続きだった。激しいものであった。雨はどうしたものか、あまり好きになれぬ。まず、お天気にど...

喉仏まで見せてよ。

君は会話をする際、度々口を隠した。いつもじゃないけれど、少し口を大きく開けて発音しなければならない音が来るとき、あるいは少し笑ったりするときに、左手の指を柔らかく曲げて、まるで卵を包み込むかのような指先で、しかしぴっちり...