ゆらゆらと文月。

猫と暮らしたい。そんなことを思う。もう何年も前から波のように寄せては引き、そしてまた寄せてきた願望である。 昔動物に愛情を持てず、長く自分に戸惑っていた時期があった。‘愛情を持てない’というのは、「可愛い!」と飛び込んで...

ひと針の楽園。

蓮の葉が一斉に揺れた。風に吹かれ波打ち、どこまでも続く。雲がいつもより低い気がする。風はごうごうと唸っていて不気味だ。もうすぐ雨が降る。 口内炎が沁みた。いつの間にかできていた小さなそれは、水を口に含むたび痛む。無意識下...